月の光

6/23/2006

『明日の記憶』の世界

数日前から、しばらく読めないままになっていた『明日の記憶』を読みはじめ、昨晩、読み終わった。
若年性アルツハイマーと診断された主人公の一人称の世界に引き込まれるように、最後のページまで進んだが、様々な工夫が施されているがゆえに、読むものが自分自身も佐伯になったような錯覚に陥る。佐伯の感情や思考が、説明されているのではなくて、淡々と語られているのであるが、それが返って、私の気持ちを掻き毟るのだ。途中からは読んでいる私自身にとっても、佐伯の経験と同様、そこで書かれている(起こっている)ことは事実なのか、幻覚か、作話かの区別がつかなくなってくる。自分自身の足元も揺らぎ始めてしまうような感覚に陥れられるのである。

「記憶」についての記述も興味深い。
「記憶は自分だけのものじゃない。人と分かち合ったり、確かめ合ったりするものでもあり、生きていく上での大切な約束ごとでもある」(p.214)

私の物忘れは、このところ気にならなくなったかな。